調剤薬局事務と医療事務の違いとは?
それぞれのメリット・デメリット、違いを解説
医療機関で事務として働こうと思ったとき、「調剤薬局事務」と「医療事務」という資格が思い浮かぶ方は多いでしょう。似ているように思える調剤薬局事務と医療事務には、実は働き方や仕事内容に違いがあります。本記事では、調剤薬局事務と医療事務の違いについて、それぞれの特徴やメリット、デメリット、仕事の適性などをご紹介しながら解説します。どちらで働くか迷っている方はぜひ参考にしてください。
調剤薬局事務と医療事務の違い
医療系の事務職は、大きく分けて「調剤薬局事務」「医療事務」の2種類があります。まずは、調剤薬局事務と医療事務の違いについて、それぞれの特徴を見ていきましょう。
調剤薬局事務の特徴
調剤薬局事務(調剤事務)は、薬局事務が専門の事務員で、主に薬剤師のサポートを行う仕事です。調剤薬局やドラッグストアなどで働きます。医療事務と同様に受付・会計、レセプト作成、データ入力を行うほか、調剤報酬請求、医薬品の発注・検品なども行います。
共通点として調剤薬局事務・医療事務ともに患者さんと関わることが多く、専門的な知識や技術が必要なことが挙げられます。
医療事務の特徴
医療事務は、主な勤務先が病院やクリニックとなり、場合によっては健診センターや健康保険組合などで働く場合もあります。
仕事内容は患者対応業務や薬代の会計などの窓口業務から、レセプト(保険証を発行している保険者に医療機関が請求する医療報酬明細書のこと)業務や医師のサポート業務まで多岐にわたります。対面での業務も多く、一般的な事務員とは仕事内容が大きく異なるのが特徴です。
規模が大きいクリニックや病院の場合、それぞれの仕事を分業して行うことが多く、逆に小さなクリニックの場合はこれらの業務を全て1人で行うこともあります。
調剤薬局事務と医療事務のメリット・デメリットとは?
調剤薬局事務や医療事務は、長く続けられることや雇用が安定しているということが最大のメリットといえるでしょう。資格はあった方がより確実ですが、クリニックや薬局によっては資格がなくても、また未経験でも雇ってもらえる場合もあります。
また、一度働けば医療に関する知識が身につくため、経験があることで一度離職しても再就職がしやすいという傾向にあります。地域を選ばず安定して働けることなどもメリットとして挙げられるでしょう。
ここからは、調剤薬局事務と医療事務それぞれの仕事で得られるメリットや魅力、その反対のデメリットについて詳しくご紹介します。
調剤薬局事務のメリット
調剤薬局事務は、薬剤師の仕事を代行できるわけではありません。シール貼りや記入の作業など、簡単なお手伝いをするのが主な仕事です。そのため、医療事務と比較すると調剤薬局事務は仕事内容が簡単で、患者対応の負担も小さいことが特徴です。
また、調剤薬局の営業時間に合わせた勤務時間になるため、家事や育児をしながら働く時間を選びたい人は調剤薬局の仕事が向いているといえるでしょう。
調剤薬局事務のデメリット
調剤薬局事務のデメリットとして、求人案件が少ないということが挙げられます。パート、アルバイトでの求人が多く、女性を中心に高い人気を集める職種であるため、応募が早く締め切られやすい傾向にあるようです。
また、医薬品発注や仕分けを行う場合は、薬の知識も必要になるケースもあるため、業務内容を事前に確認することをおすすめします。
医療事務のメリット
医療機関で多くの患者さんの対応を行う医療事務は、調剤薬局事務に比べてより高いコミュニケーションスキルが求められる傾向にあります。大変な仕事ではありますが、その分クリニックから総合病院までさまざまな形態の医療機関で働けるため、比較的雇用が安定しているというメリットがあります。
また医療事務は調剤薬局事務よりも患者さんと関わる場面も多いため、医療機関の一員として期待される役割が大きく、やりがいを感じることも多いでしょう。
医療事務のデメリット
医療事務のデメリットとして、調剤薬局事務に比べて業務内容が幅広いため、覚えることが多いことがあります。また、医療事務の方がレセプト作成が難しく、診療報酬についての専門的な知識も必要となります。
また、患者さんから風邪などをもらわないように、日常生活の中で体調管理に気をつけましょう。
調剤薬局事務と医療事務の資格
ここからは、調剤薬局事務と医療事務の資格についてご紹介していきます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
調剤薬局事務の主要な資格
医療保険調剤報酬事務士
医療保険調剤報酬事務士の試験は、調剤薬局事務の業務内容で重要となる調剤レセプトの作成を中心とした内容となっています。また、在宅試験となるため自宅で試験を受けることができ、気軽に挑戦できる資格試験となります。
受験資格:認定講座を修了していること
合格基準:非公開
受験料:4,500円(税込)
合格率:非公開
出典:たのまな
調剤事務管理士®技能認定試験
調剤事務管理士は、調剤薬局事務の中でもポピュラーな資格の一つです。薬局運営のサポート業務をはじめとしたスキルが身につきます。技能認定振興協会が認定する民間資格であり、受験資格に制限がなく、学習範囲が薬剤分野に限られることから、医療系資格としては比較的取得しやすい資格です。
受験資格:特になし
合格基準:(1)実技試験/各作成問題ごとに約60%以上の得点をし、かつ、2問の合計で約80%以上 (2)学科試験/約80点以上 ※実技・学科ともに合格基準に達した場合に合格と判定。
受験料:6,500円(税込)(学科・実技)
合格率:およそ60%
出典:調剤事務管理士®技能認定試験
調剤薬局事務検定試験
2018年より実施された、日本医療事務協会主催の資格試験です。調剤薬局での請求事務業務の基礎的な知識と技能レベルが審査されます。
受験資格:特になし
合格基準:原則として、学科・実技それぞれにおいて正答率6割以上
ただし、問題の難易度などによる変動有
受験料:一般受験 / 5,500円(税込)
団体受験 / 4,950円(税込)
合格率:およそ90%
出典:調剤薬局事務検定試験
調剤報酬請求事務技能認定
2003年度より調剤報酬請求事務に関する教育訓練ガイドラインを策定し、当該認定事業を実施しました。請求事務処理技能に医療関連知識を加えることで、専門職としてのレベルの向上を図っています。
調剤報酬請求事務等の知識と技能のレベルを評価、認定することによって、その職業能力の向上と社会的地位の向上などに資することを目的としています。
受験資格:特になし
受験料:3,000円(税込)
合格基準:合格基準は学科と実技の各得点率が90%以上
合格率:非公開
出典:調剤報酬請求事務技能認定|資格試験
※試験情報は2022年12月時点のものとなります。最新の情報は公式サイトにてご確認ください。
医療事務の主要な資格
医療事務認定実務者®試験
医療事務認定実務者試験は、患者接遇やマナーなど受付業務に関する知識に重点が置かれた試験です。
試験内容は、学科問題として医療事務に関する基礎知識を、実技問題として診療所での外来症例を想定したレセプト作成問題1症例を全て4択問題として出題し、医療事務の実務における基本習熟度を客観的に判断します。
試験時間:90分
受験資格:特になし
受験料:一般受験 :5,000円(税込)
合格基準:原則として、学科、実技それぞれ正答率6割以上を合格としている
ただし、問題の難易度等により変動する場合がある
合格率:おおむね60~80%
出典:医療事務認定実務者®試験
医療事務技能審査試験
実務で必要とされる技能者の養成を図るため、診療報酬請求事務技能に加えて、窓口業務などで求められる患者接遇の技能も試験科目に採り入れています。
医療事務技能審査試験の合格者には「メディカルクラーク」の称号が付与されます。この称号は、診療報酬請求事務業務や窓口業務など医療事務職として求められる能力を備えていることを証明するものです。
受験資格:特になし
受験料:7,700円(税込)(医科・歯科)
合格基準:学科試験および実技試験I・IIの全ての得点率が70%に達した時点で合格とする
※『試験科目免除制度』3科目全てを受験した上で、得点率70%に達した科目は、6カ月間に限り受験が免除となる
出典:試験概要|医療事務技能審査試験(メディカルクラーク®)|日本医療教育財団
医科医療事務管理士 技能認定試験
「医療事務管理士」は、日本で最初の「医療事務の資格」として、幅広く医療機関に認知された資格です。医療保険制度や医学に関する知識が求められる筆記試験と、レセプト作成・点検の実技試験からなる認定試験です。
「医療事務管理士」の称号は、2005年10月、特許庁より商標登録が認められたことにより、名実ともに認知された資格となりました。職業訓練で医療事務を目指す場合、この資格取得を目標としていることが多くなっています。
受験資格:特になし
合格基準:実務試験はレセプト点検問題1問、レセプト作成問題2問の3問それぞれが60%以上の得点をしなければならない。 さらに3問の合計が80%以上必要(在宅試験の場合)
合格率:50%
診療報酬請求事務能力認定試験
診療報酬請求の実務を正しく行うために必要な能力を認定する試験であり、実務経験者も多く受験しています。合格率は30%前後を推移しており、医療事務関連資格の中では最難関となっています。勤務先によっては、この資格を取得している人に対して手当てを支給するケースがあります。
試験時間:3時間
受験資格:特になし
受験料:9,000円(税込)
合格基準:認定試験の実施後、試験委員会(外部の医師、歯科医師により構成)を開催し、ご意見をいただきながら試験委員会の合意としての判定を行っている。
合格率:およそ30%
※試験情報は2022年12月時点のものとなります。最新の情報は公式サイトにてご確認ください。
まとめ
今回は、調剤薬局事務と医療事務の違いについて詳しく解説しました。医療機関の事務スタッフとはいえ、業務内容や使う知識は異なります。しかし、調剤薬局事務と医療事務の資格は、相互に関連し、得た知識はどちらの仕事にも応用できます。
調剤薬局事務・医療事務ともに、地域の医療を担う重要な職種です。一般事務に比べると医療事務は求められるものが多いですが、仕事柄、患者さんと接する機会も多く、やりがいも感じられる仕事でもあります。これらの特徴を踏まえた上で、調剤薬局事務・医療事務ともに検討してみてください。
<執筆者>
氏名:中村 史織
資格:調剤薬局事務・医療事務
プロフィール:2014年に調剤薬局事務・医療事務の資格を同時取得。歯科にて5年勤務し、ナース長まで勤める。現在はフリーライターとして活動中。
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