医療事務の平均月収はどれくらい?
お給料を上げるには
医療事務は、一度スキルを身につければ、ブランクがあってもミドル層になっても再就職しやすいお仕事の一つです。それにもかかわらず、お給料の安さから敬遠されることもしばしば。そこで本記事では、医療事務の平均月収がいくらなのか、待遇面や仕事内容はどうなのか、お給料を上げる方法はあるのかなどについても具体的に解説していきます。医療事務に興味を持ち、目指そうと考えている方が知りたい情報を網羅したので、ぜひ参考にしてみてください。
医療事務の平均月収はどれくらい?
2021年にハローワークに求人登録された情報によると、医療事務の全国平均月収は18.5万円です(厚生労働省「職業情報サイトjobtag」より)。同様に算出された一般事務の全国平均月収が19.6万円ですので、医療事務の方が1万円ほど安いといえます。
しかし、この金額はあくまでも全国平均であって、地域性や医療機関の規模、雇用形態を考慮した数字ではありません。それぞれの要素を分ければ、また違った数字になるはずです。
以下の表は、同サイトから無作為に地域をピックアップしてまとめたものです。東京都では平均月収が19.2~23.3万円になっており、全国平均に比べて1~5万円ほど高くなっているのがわかります。また同じ都道府県内でも、約3~4万円の開きがあることが見て取れます。
では、医療事務の平均月収は雇用形態別になるとどのように変わるのでしょうか。
雇用形態ごとに変わる?医療事務の平均月収
医療事務の平均月収は、地域性のみならず雇用形態によっても異なります。以下の平均月収は、求人サイト「求人ボックス」に登録された求人情報を統計したデータ(2022年11月28日更新)を参考に雇用形態別に月収換算したものです。
・正規職員の場合 26.5万円(※1)
・派遣社員の場合 約22.4万円(※2)
・パートタイマーの場合 約18万円(※3)
※1:平均年収318万円を単純計算で月割りしたものです。
※2:平均時給1,270円を8h/日×22日出勤で換算しています。
※3:時給1,022円を8h/日×22日出勤で換算しています。
雇用形態で月収に差が出る背景には、職責と待遇といった要素の影響があるでしょう。なお、パートタイマーで働く場合は、医療機関に直接雇用されるのと派遣会社に登録するのとでは最低時給が異なることもあります。求人情報をよく確かめてから応募するようにしましょう。
所属部署でお給料は変わる?
一部の部署に配属された場合を除き、基本的には所属部署によってお給料が変わることはありません。一部の部署とは、DPC(診断群分類別包括評価)管理や診療報酬明細書(レセプト)請求部門に配属された場合です。
DPC管理も診療報酬明細書請求も、どちらも高度な専門的知識が求められる業務です。そのため、一般の医療事務に比べてお給料が高くなる傾向にあるのです。特に、DPC管理においては、医療事務職の中で上位資格に当たる「診療情報管理士」の資格の取得が求められます。医療事務資格と比べて、資格を持つ人が少ないことから、お給料が高くなりやすいのです。
医療事務にもボーナスはある?
ボーナスは、医療機関の経営状態や雇用形態によって支給の有無が異なります。どのような雇用形態であれば支払われるケースが多いのか、以下にまとめてみました。
ボーナスがあるのはどんな人?
ボーナスが支払われるケースで多いのは、医療機関に直接雇用されている正規職員のほか、派遣社員であれば派遣元会社の社員になっている人です。
一口に派遣社員といっても、派遣元会社とどのような雇用契約を結んでいるのか、その契約でボーナスがどのような規定になっているのかによっても支給の有無が異なります。あらかじめ、求人情報で確かめておいた方がよいでしょう。
医療事務にも残業はある?
残業は、従事する業務内容や雇用形態、職場の状況によるため、必ずしも発生するとは限りません。しかし、状況によってはパートタイマーでも残業が生じるときもあります。その場合、配偶者控除を受けている人は、年間の収入見込み額に応じて後日就労時間の調整を行い、残業時間分を相殺することができるでしょう。
残業があるのはどんなとき?
残業は、全くない部署もあれば、発生する部署もあります。特に、繁忙期に当たる時期には発生しやすくなります。病院の繁忙期は、診療科や扱っている診療内容によっても異なるため、一律にはいえません。例えば、内科や耳鼻科では感染症の流行時期などが繁忙期といえます。こうした時期には、一時的に業務量が増えるため、残業が発生しやすい状況にあるようです。
このほかでは、毎月月末~翌月10日までの期間が残業の発生しやすい時期になります。どこの医療機関でもこの期間中に、前月までに受診した患者さんの診療報酬明細書の作成や点検を行い、毎月10日には国民健康保険や協会けんぽなどの保険者(読み:ほけんじゃ)に明細書が届くように送らなくてはならないからです。
診療報酬明細書は、1枚ずつ人間の目で点検しているため、受診患者さんの数に比例して担当者の負担が増えることから、残業が発生しやすいといえるのです。
医療事務の待遇はどんなもの?
医療事務の待遇で特に気になるところといえば、休暇に関するところではないでしょうか。病院の運営形態や雇用形態によっても変わるため、それぞれ詳しく見ていきましょう。
有給休暇は取りやすい?長期休暇はある?
有給休暇の取りやすさは、時期によって変わります。繁忙期では、人員不足からのサービス低下を懸念して日程調整を促されることがある一方、閑散期では比較的希望の日程で取得しやすい傾向にあるようです。もしも、希望する日程が繁忙期に重なると予想される場合には、早めに上長に相談しておくことをおすすめします。
長期休暇はあるところは多いものの、いつ取得できるかは、病院の業態や所属する部署によって異なります。
国公立系の病院は、基本的には暦通りの営業を行っているため、年末年始は別にしてもお盆休みといわれるような夏季休業がありません。そのため、夏季休暇を取得する際には、交代で取得していくことが多いようです。希望する日程がある場合は、早めに上長に相談しておけば要望が通りやすいでしょう。
私立系の病院やクリニック・診療所では、暦に加えてお盆休みを取るところが多いため、その時期に合わせて長期休暇を取得することも可能でしょう。
休日出勤はある?
基本的にはないといえます。休診日にあえて休日出勤してまで行う業務は、そう多くないからです。あるとすれば、診療報酬明細書請求業務に従事している場合でしょう。毎月月末~翌月10日までの間に業務が集中するため、進捗状況によってはその期間中で休日出勤を求められることがあるかもしれません。
勤務形態はどうなる?
就業先によっては、医療機関の診療時間が異なるため、勤務形態にも違いがあります。例えば、クリニックや診療所には中休みがあるところが大半です。そのため、正規職員として勤務する場合では、午前診と午後診を合わせて常勤とするケースが一般的です。パートタイマーの場合では、年間の所得を鑑みて、午前診のみや午後診のみの勤務になることが多いようです。
病院のように中休みがないところでは、診療が途切れることがないため、外来担当者はシフト制での勤務、入院担当者は朝から夕方までの勤務形態になることが多いようです。
外来担当者だけにシフト制が導入されている背景には、病院の外来診療時間が影響しています。通常、外来診療は朝から始まりますが、患者さんによっては検査や治療が重なって診療が夜に終わることも少なくありません。そうした実態に合わせて勤務すると、連日残業になりかねません。それを避けるためにシフト制にしているのです。
医療事務の仕事内容は?
医療事務は、その名の通り医療や病院運営にまつわる事務処理を担います。大きく分けると、受付・会計・請求の3つがあります。これらの業務には、患者さん対応も含まれています。
窓口で患者さんへの案内や説明をしたり、診療費の算定や料金徴収を行ったり、そのほかにも、別の医療機関や役所からの問い合わせに応じたりするなど、その業務の広さは多岐にわたります。
こうした業務は、病院の規模が大きくなるほど分業になります。配属される部署によっては、患者さん対応と事務仕事のバランスがどちらかに大きく偏ることもあります。
以下は、全ての医療機関に共通する仕事内容です。
受付や会計業務を行う部署では、患者さん対応をしながら事務処理を行うため、マルチタスク能力が求められる職場といえます。請求を行う部署では、診療報酬明細書の作成・点検を行うのが主な業務になるため、他の部署に比べて患者さんと接する機会は多くありません。しかし、患者さんからレセプト開示などの請求があったり、レセプトの内容説明を求められたりすることもあるため、他の医療事務同様にビジネスマナーは必要です。
医療事務でお給料を上げるには?
医療事務でお給料を上げるにはいくつかの方法があり、よく見られるのは以下の4つのパターンです。
・上位資格を取得する
・勤務先に交渉する
・条件のいい職場に転職する
・昇進する
上位資格を取得する
取っておきたい医療事務の上位資格の中でも、特におすすめしたいのは「診療報酬請求事務能力認定試験」です。診療報酬請求事務能力認定試験は、病院によっては資格保持者に手当を出してくれるところもあります。お給料を上げるのに直接的につながるだけでなく、就職や転職にも有利に働きます。
ちなみに、パソコン操作にまつわるIT系資格ですが、こちらはベーシックなスキルと見られているため、昇給につながるというよりは就職や転職に有利に働くようです。昨今の医療機関は、規模の大小を問わず電子カルテの導入が進んでおり、基本的なパソコン操作ができることが求められているからです。
勤務先に交渉する
働きぶりを知っているからこそ、交渉の余地があるともいえるでしょう。交渉のタイミングとしては、人事査定での面談時や、派遣社員であれば契約の更新時期がベストです。ただし、派遣社員は、予算の都合上お給料を上げにくいケースも多々あるようです。もしも、そのケースに該当するようであれば、派遣社員としてキャリアを積んでから、正規職員への道を探した方が賢明かもしれません。
条件のいい職場に転職する
基本給が高くても手当のないところもあれば、基本給が低くても諸手当の多いところもあるなど、医療機関によって待遇はまちまちです。医療事務の転職は、前のキャリアを重視してもらいやすいため、経験があるほどいい条件で転職しやすいといえます。派遣社員で磨いたスキルであっても正規職員に通用しますから、安心して転職活動に励んでください。
昇進する
昇進するためには、通常業務で求められるスキルがあることはもちろん、業務への深い理解やマネジメントスキルが必要です。日頃から業務への理解度を深めるよう意識しつつ、上長らがどのようにマネジメントを行っているのかを観察してみましょう。きっとヒントが見つかるはずです。
まとめ
医療事務の平均月収は、全国平均で18.5万円。一般事務と比べてやや低い傾向にあるものの、極端に低いわけではありません。地域性や医療機関の規模、雇用形態などの要素によっても変わる上、頑張り次第でお給料を上げていくことも可能なようです。
医療事務のスキルは、一度身につければ全国どこでも通用する安定性の高いものといえます。無資格で働くことも可能ではありますが、実際に働き出すと医療事務としての専門知識が求められる機会が多くなっています。医療事務の資格を取得してから就職する方が、安心して働けることでしょう。休日にはしっかり休むことができ、ライフスタイルが変わってもいろいろな雇用形態で長く働ける医療事務の資格にチャレンジしてみてはいかかでしょうか。
<執筆者>
氏名:浜田 みか
資格:医療事務(医科)能力検定試験1級、調剤報酬請求事務技能検定、介護報酬請求事務技能検定
プロフィール:国公立系総合病院の医療事務として約7年勤務したのちライターへ。医療事務では、会計部門責任者として診療費算定・料金徴収など会計業務全般の管理監督を行いつつ、診療報酬明細書請求業務も兼務する。並行して、約130人の医療事務スタッフの統括業務や病院運営にも携わる。統括業務ではスタッフの人事採用や育成を行い、病院運営では経理関係から院内の連携力強化のためのワークフロー構築まで幅広く対応。
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