「薬のプロフェッショナル」としての役割は、これまでは薬剤師が担ってきましたが、薬事法の改正に伴い、2009年度より「登録販売者」という資格が新たに誕生しました。一般用医薬品の一部を販売できる登録販売者になるためにはどんな試験を受ければいいのか、そして、どのような知識があれば、合格につながるのでしょうか。
登録販売者とは
登録販売者とは、一般用医薬品のうち第2類医薬品と第3類医薬品を販売できる資格です。
これまでは、医薬品は薬剤師しか販売できませんでした。しかし、薬剤師不足であることと、医薬品を扱うドラッグストアチェーン・小売業からのニーズの高まりを受け、薬剤師以外にも医薬品を販売できる資格が新たに作られました。
要指導医薬品と第1類医薬品の販売は、薬剤師でないと販売できませんが、ドラッグストアや小売店で販売されている医薬品の多くは、第2類・第3類の医薬品であるため、登録販売者は多くのお店で活躍を期待されています。
登録販売者になるには?
登録販売者になるためには、まず、都道府県が実施する登録販売者試験に合格する必要があります。
かつて、登録販売者試験を受験するためには、「大学の薬学部を卒業していなければいけない」「一定期間以上の実務経験がなければいけない」など、いくつかの条件が必要でしたが、 2015年度の試験から、受験資格の規定がなくなり、誰でも受験できるようになりました。
登録販売者試験はどの都道府県で受けても構いません。試験に合格したら、勤務先がある都道府県に、登録販売者として働くことを申請することで、登録販売者と認められます(登録販売者試験を受けた都道府県とは関係ありません)。
また、過去5年間で通算2年以上の実務・業務経験がない人は、すぐに一人で医薬品の販売ができるわけではありません。実務・業務経験が過去5年間で通算2年以上になるまでは、管理者・管理代行者の管理・指導のもとでなければ、医薬品の販売はできないという条件がつきます。
登録販売者試験に合格するために必要な知識は?
登録販売者試験に合格するためには、医薬品の成分や副作用などの知識だけでなく、人体のしくみや薬事関連の法律なども理解する必要があります。登録販売者として、薬を適切に販売するために必要な知識を、総合的に学ぶ必要があるのです。
もちろん、実際に登録販売者になった場合は、患者さんの話をきちんと理解し、適切な薬を提案できるコミュニケーション能力も求められます。
登録販売者の試験内容と出題範囲
厚生労働省の「登録販売者試験実施要項」によると、登録販売者の試験5項目とそれぞれの出題数、配分時間は、以下のようになっています。
試験項目 | 出題数 | 配分時間 |
(1)医薬品に共通する特性と基本的な知識 | 20 | 40分 |
(2)人体の働きと医薬品 | 20 | 40分 |
(3)主な医薬品とその作用 | 40 | 80分 |
(4)薬事関連法規・制度 | 20 | 40分 |
(5)医薬品の適正使用・安全対策 | 20 | 40分 |
合計 | 120 | 240分 |
各都道府県は、厚生労働省が定めた「試験問題の作成に関する手引き」に書かれている、項目ごとの出題範囲と主題方針に沿って試験問題を作成します。
2015年4月現在の「試験問題の作成に関する手引き」に書かれている、各項目の出題範囲は次のとおりです。
(1)医薬品に共通する特性と基本的な知識
- ・医薬品概論
- ・医薬品の効き目や安全性に影響を与える要因
- ・適切な医薬品選択と受診勧奨
- ・薬害の歴史
(2)人体の働きと医薬品
- ・人体の構造と働き
- ・薬が働く仕組み
- ・症状からみた主な副作用
(3)主な医薬品とその作用
- ・精神神経に作用する薬
- ・呼吸器官に作用する薬
- ・胃腸に作用する薬
- ・心臓などの器官や血液に作用する薬
- ・排泄に関わる部位に作用する薬
- ・婦人薬
- ・内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)
- ・鼻に用いる薬
- ・眼科用薬
- ・皮膚に用いる薬
- ・歯や口中に用いる薬
- ・禁煙補助剤
- ・滋養強壮保健薬
- ・漢方処方製剤・生薬製剤
- ・公衆衛生用薬
- ・一般用検査薬
(4)薬事関連法規・制度
- ・医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の目的等
- ・医薬品の分類・取扱い等
- ・医薬品の販売業の許可
- ・医薬品販売に関する法令遵守
(5)医薬品の適正使用・安全対策
- ・医薬品の適正使用情報
- ・医薬品の安全対策
- ・医薬品の副作用等による健康被害の救済
- ・一般用医薬品に関する主な安全対策
- ・医薬品の適正使用のための啓発活動
医薬品に関わる知識が全般的に問われます。それ相応の試験準備をしないと、合格は難しいでしょう。
登録販売者試験の合格ラインと合格率
「登録販売者試験実施要項」には、登録販売者の合格基準についてこのように書かれています。
「総出題数に対して7割程度の正答の場合であって、試験項目ごとに都道府県知事が定める一定割合以上の正答のときに合格とすること。」
つまり、基本的には70%以上の正答率が求められますが、都道府県により基準が若干変わる場合もあるので注意しましょう。 また、全体や都道府県ごとの受験者数、合格者数、合格率は厚生労働省がまとめて公表しています。
2020年度登録販売者試験は、全国で約53,000人が受験し、22,000人が合格(合格率41.5%)しています (ただし、同じ人が複数の試験を受験し、また複数の試験で合格している可能性があるため、延べ人数となります)。 都道府県ごとに試験内容が違うため、都道府県ごとの合格率には、かなりのばらつきがあります。 合格率が一番高いのが広島県の58%。一方、最低は埼玉県の30%です。両県で合格率の差は2倍ほどになっています。 どの場所で試験を受けるかを決めたら、その都道府県の過去の問題傾向と照らし合わせて、対策を練ることも大切です。
登録販売者試験のおすすめの勉強法
登録販売者試験の出題範囲は非常に広くなっています。そのため、しっかり準備をしないと、合格するのは難しいでしょう。 試験対策には、市販のテキストや専門学校に通うなどの方法がありますが、おすすめは通信講座を活用することです。
たのまなの「登録販売者合格講座」では、効率的に合格を目指せる、プログラムに沿った教材がそろえられています。 添削レポートを利用して、自分の苦手分野を把握したり、勉強する時間や場所も自分の都合で決められるので、仕事をしながらでも無理なく学習を進められます。
ここまで、登録販売者の仕事内容と試験範囲、合格率などをご紹介しました。登録販売者の需要は、ドラッグストアや医薬品を扱うコンビニエンスストアの増加に伴い大きくなり、資格の価値は今後さらに高まることが予想されます。 合格するためにも、通信講座の教材などを有効に使って、万全の体制で試験に臨みましょう。